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2010年 04月 09日
前回「鉄道路線バス転換のすすめ」という記事を書きましたが、鉄道を残していたほうが有益な場合もあります。
例えば鉄道の経路にある町の間で、通勤・通学、商業・観光などを通じて、鉄道に限らず人の流動が毎時平均1000人以上あるような場合これにあたるかも知れません。 地方のローカル線に乗っていて、コンクリートの立派な橋を見上げることがあります。 その橋はこれまた立派なトンネルにつながっていたりします。 これが高速道路ならまだわかるのですが、最近ではバイパスや一般道路であることも少なくありません。 一方ローカル線のほうはというと、雑草の生えた土手の上を、山をよけ川をもっとも短く渡れる小さな橋で横切り、くねくね曲がりながら走っています。 線路の設備も貧弱で、直線でもまさか100km/hで走ることはできません。 これでは勝負になろうはずがありません。 交通手段は基本的に所要時間とコストのバランスで選択されますが、運賃の高いローカル線が、しかも遅いのですから。 これまで鉄道の整備は鉄道会社任せで、道路は国もしくは地方自治体により優先的に整備されてきたわけですが、その結果鉄道と道路のインフラの格差が広がりました。 この格差が放置されたことが、各地の鉄道が廃止されるまでの状況に陥った原因の1つと考えられないでしょうか。 そこで、公共交通の幹線で重要な役割を果たす鉄道のインフラを高規格化すべきだと言いたいのです。 高規格化といっても、地方のローカル線を考えていますので、複線電化にすべきだとは考えていません。単線非電化でかまいません。 その場合、鉄道を高規格化する工事と、道路を高規格化する工事、費用がどれほど違うものでしょうか。 既設路線の状況や地形などによりその結果は異なると思いますが、場合によっては鉄道の高規格化のほうが安く上がるかもしれません。 ただし、費用が安かったとしても、それだけでは難しいのが現実です。 第一、鉄道会社がその費用を負担できるくらいならばすでに改良工事を実施しているわけです。 そして法規制がありますから、鉄道会社の線路を国や自治体が直接改良することもできません。 したがって、まずは自治体が鉄道を道路と同じように必要なインフラとして位置づけなければなりません。 そしてその認識の下、補助金を投入しているような自力で維持できない鉄道については、鉄道の経営を上下分離して、インフラは自治体が運営すべきなのです。 さらに道路と同じように整備の予算を組んで、整備を進めるべきなのです。 自治体が道路を整備して、バスや運送会社、自家用車が道路を使うのと同じです。 政治的な問題ですが、ここまで来れば、あとは限られた予算の中で道路と鉄道にどのように配分するか検討することができます。 検討から実現の過程で、自家用車を利用したい人、公共交通を利用しない人との合意の形成が難しいこともあるかもしれません。 その検討の結果、鉄道を廃止することも考えられるかもしれませんが、これは民意で決めたことです。 いずれにしても、現在は鉄道と道路でインフラの格差が広がりすぎたために、経済学的なバランスが自動車に圧倒的に有利な側に振れている以上、このような積極的な方法で公共交通の側に振り戻すべきです。 鉄道と並行する道路に自家用車がたくさん走っている場合は可能性があります。 鉄道が高規格化され高速運転できるようになると、この自家用車のいくらかの人が鉄道に戻ってくれるのではないでしょうか。 2010年 04月 06日
鉄道路線の廃止、バス転換という話が出ると、利用者が少ないために廃止されるのにも関わらず、鉄道の存続を訴える人がたくさん現れます。
しかしバス転換というのは、そんなに悪いものなのでしょうか。 鉄道のメリットを考えると、 ・定時性 ・高速輸送 ・大量輸送 ・高いエネルギー効率 などが上げられます。とはいえ利用者が少ない鉄道では、定時性と高速輸送のメリットしか得られていません。鉄道の設備によっては定時制のメリットしか得られていないかも知れません。 一方、メリットというほどではありませんが、一般的にバスよりも鉄道のほうが運賃が安い傾向にあります。 また、鉄道が通っている地域の方が発展しているというイメージもあるかもしれません。 これらのことから考えると、一般的な鉄道のバス転換反対の理由は、 ・運賃の上昇 ・所要時間の増加(=速度の低下) ・渋滞などによる遅延の可能性 ・鉄道廃止によるイメージ低下 ということに整理されます。 ならばこの問題を解消すれば、もしくは改善できれば、バス転換は有意義なものになるかもしれません。 1つずつ解決策、改善策を考えてみましょう。 ・運賃の上昇 バス会社を新設したり、公営にすることで、既存の価格設定によらず料金を自由に設定できます。ただし、赤字運営になる可能性がありますので、補助についても併せて検討する必要があります。 ・所要時間の増加(=速度の低下) ・渋滞などによる遅延の可能性 近年のバス車両は性能もよく、道路の制限速度の問題をクリアできれば高速運転も可能です。 そこで、既存の道路などの設備を一部バス専用にしたり、バス優先レーンを設けたりすれば、限られた経費の中で鉄道と遜色ない所要時間と定時性を確保できる可能性があります。 廃止された鉄道の線路跡をバス専用道路(もしくは軌道)として整備して高速運転するという方法も考えられます。 ・鉄道廃止によるイメージ低下 駅が市街地にある場合は駅の施設を積極的に活用することで、駅がなくなってしまうことによるイメージ低下は防ぐことができるでしょう。 逆に市街地と駅が離れている場合は、バスは自由にルートを設定できるのですから、市街地にある余裕のある施設を駅として活用することも考えられ、この場合はイメージアップにもつながるかもしれません。 バスを新交通システムと捉え、乗り場や案内、ITを活用した情報提供などで、鉄道や他の交通機関との連携を強めれば、これまでと違ったイメージを作ることもできるかもしれません。 さらに、バスは鉄道のように行き違いなどによる制約を受けませんし、車両も低価格で導入できますから、運転本数を増やして一定間隔で運転すれば、利便性が向上します。 もう1つ、バス停は簡単に設置できますから、ショッピングセンターに乗り入れたり、新興住宅地があればその中にバス停を作ったりと、これまでの路線にとらわれずバス停を増設することでも利便性向上につながります。 ただし、これらを実現しても、自動車のほうが経済的(*)である状況に変わりはありませんので、乗客はそれほど増えないことは考えられますし(減り続けるかもしれません)、おそらく自治体の負担が必要になります。 ( * 公共交通機関が不経済なのではなく、政策的に自動車と道路優先でインフラが整備されてきたため、結果として自動車のほうが経済的という意味です。) バス転換は、鉄道を維持するよりは経費を抑えることができるのですから、工夫して、できるだけ利便性を維持もしくは向上しつつ、積極的に推進することが、公共交通網全体にとって最善の策になるのではないでしょうか。 2010年 02月 16日
先日、人間ドックを受けるため浜松赤十字病院に訪れたのですが、公共交通がとても良かったので紹介します。
浜松赤十字病院は2007年11月に新しい病院に移ったそうで、きれいですし設備もとても充実しているようでした。これだけの病院であれば、近隣の方々だけでなく、浜松市の広い範囲や磐田市、森町などの医療も担っているのではないかと感じました。 私は遠鉄で小林駅に向かい、小林駅から行きは徒歩で、帰りは遠鉄バスに乗りました。 ![]() まず驚くのは、小林駅には階段が無いことです。ホームからスロープで、階段なしでバス停に行くことができます。(写真) そして、小林駅からのバスは、病院の正面玄関の前に着きます。もちろん小林駅にも日赤病院バス停にも屋根がありますので、雨が降っていても濡れずにすみます。バスはノンステップバスで、運賃は100円、1時間に1~3本運転しています。 ![]() さらに、私は健康管理センターに行ったのですが、正面玄関だけでなく健康管理センターの前にもバス停があって(残念ながらこちらは屋根がありませんが)、正面玄関まで回らなくてもバスに乗ることができました。 利用者の負担を軽減する、便利にすることを1つ1つ積み重ねて、とても便利な公共交通ができていたのです。 ちょっと考えてみてください。病院ですから、体調が良くない人が訪れます。体調が良くないとき、たくさん歩いたり、階段を上り下りしたり、ましてや雨が降っていて傘を差したり、それでも荷物があって濡れてしまうようなら大変な負担です。 それを以下のようなことを行ってすごく良くしています。 ・駅からバス停まで階段なしで移動できるようにする。 ・歩行距離を短くする。(出入口の一番近くはバスとタクシーにすべき) ・バス停に屋根を付ける。 これらのことは、病院に限らず他の場所でも同じことが言えるのではないでしょうか。 人間ですから、体調が良いときばかりではありません。体調が良くても、重い荷物を持っていたりすれば負担は大きいものです。 そういった意味では、上記のような工夫は、公共交通を便利にするポイントではないでしょうか。 こうしたポイントをクリアしている浜松赤十字病院と遠州鉄道はすばらしいと思います。 こうしたポイントをクリアしていない施設も多数あるのではないかと思います。ぜひクリアしてより便利な公共交通を実現してほしいと思います。 浜松赤十字病院 http://www.hamamatsu.jrc.or.jp/ 遠鉄電車西鹿島線「小林」駅下車 遠鉄バス:小林駅⇔日赤病院(運賃:100円) または徒歩10分 2010年 02月 06日
これまで高速道路が無料化されるた場合のメリットとデメリット、実施による影響、そして前回は民主党の高速道路政策を整理しました。
今回は、これらのまとめとして、現状を踏まえて私達が考えるべきことを書いてみたいと思います。 民主党政権が継続してそのまま高速道路政策が実施されると、社会実験の結果を考慮して、とはなっていますが、原則全ての高速道路が無料化されます。 もしも全ての高速道路が無料化された場合、以下のようなことが起きると予想されます。 - 自動車の利用者は、公共交通よりも安く、場所によっては速く移動できる。 - トラック輸送による物流コストのうち高速道路料金が削減される。 - 車1台あたり5万円以上の税金がかかるようになる。 - 高速道路、一般道いずれも渋滞が悪化する。 - 都市部を除き、公共交通が減便や廃止に至る。 - 交通量が増えて維持や補修のコストが増加するほか、拡張や建設のコストも必要になる。 この予想から考えると、もはや高速道路だけの問題ではありません。 というよりは、私達は交通政策について考えなくてはならないのであって、高速道路無料化は1つの問題提起でしかないということです。 極端な例ならば、公共交通は廃止して、自動車のみにするという考え方もあるわけです。 この機会に、社会全体を見渡して、これからの最適な交通網について考えようではありませんか。 最近、交通弱者などという言葉が使われますが、自動車で移動できない人は確実にいますし、不便を強いられています。 私たちも、子供のうちは交通弱者ですし、年を重ねれば確実に交通弱者になっていきます。 そう考えると、私たちは人生の1/3くらいの期間は交通弱者としてすごしていることになります。 であれば、これからの交通網を考えるとき、公共交通が使いやすい環境を作るのがいいのではないでしょうか。 一方で、自動車は便利です。自動車なしの生活など考えられないという人もかなりいるでしょう。 であれば、快適な道路環境が維持されることを考えるのがいいのではないでしょうか。 この両立を考えるとき、公共交通の維持にも、道路の維持にも費用がかかることを理解しておかなくてはなりません。 そしてこの費用対効果を最大にするためには、これまでの経済学的な法則を生かして、バランスの取れた競争状態にするのがいいでしょう。 そのためには、公共交通にも自動車にも適正な負担を求めたり、設備などの差でバランスの崩れた競争力を税金を投入するなどしてバランスを取る必要があるでしょう。 このような政策を行うと、一時的には目に見える負担が増えるのですが、経済学的法則で長期的に見ると、トータルコストを抑えつつ公共交通も道路も利便性が向上します。 具体的には、以下のような政策が行われるのがいいと思います。 まず表題にもなっている高速道路無料化ですが、これはむしろ現在無料の道路も含めて、高速道路などの高規格道路は恒久的に有料化すべきでしょう。 なおこのとき、料金の徴収は民間企業を活用したり、ETCの取り付けを義務付けしたりして、コストを抑える必要があるでしょう。 次に公共交通の競争力強化については、特に鉄道やバスが中心になると思うのですが、道路が立派な橋やトンネルを通っている横に、貧弱な線路が通っている場合などが対象です。 この場合は、道路を有料化してその料金の一部や、道路に割り当てていた税金を使って線路を改良し、少なくとも所要時間が自動車よりも短くなるようにします。 バスの場合は、バス専用レーンを設けたり、鉄道の廃線跡があればバス専用道路にしたりして、やはり所要時間が自動車と同等かそれよりも短くなるようにします。 この実施は難しいかもしれませんが、これは自動車から公共交通にシフトするためには重要なことです。 そしてもう1つ、走行距離課税の導入です。自動車の燃費が向上したり、電気自動車が増えれば、ガソリン税などは意味を持たなくなります。 そこで、ガソリン税などはやめて、車種に応じた走行距離課税に変更するのです。 そして、道路の建設や維持費用は、自動車取得税や重量税と、この走行距離課税だけでまかなうようにします。 私たちは、これからの交通網をどのようにしていくべきか考えなくてはなりません。 私は公共交通を便利な環境と、快適な道路環境を維持するのがいいと考えています。 そのためには少なくとも、高速道路は無料化せず、むしろ現在無料の道路も含めて、高規格道路は恒久的に有料化するのが最善です。 最後に、初回で上げたメリットのうち今回触れなかったものについて、なぜ触れなかったかに言及しておきます。 - 通行料金収受の仕組みが不要になり高速道路の運用コストが削減される。 → 道路全体のコスト増は、通行料金収受のコストを大きく上回る可能性があります。 - 一般道路利用者が高速道路にシフトし、自動車1台あたりのCO2排出量が減少する。 → 渋滞すればCO2排出量は増えますし、交通量が増えるのですから全体ではCO2が増加します。 - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、公共交通が値下げされる可能性がある。 → 一時的には値下げされたとしても、長期的にはそれを維持できず減便、廃止となる可能性が高いです。 - 料金収受の機能がいらないのでインターを増やしやすい。 → スマートICであればすでに増やしやすくなっています。むしろ料金を取って積極的に増やすのが効果的と思います。 - 地域の交流が活性化する。 → 自動車での往来を前提にした大型ショッピングセンターや物流拠点などは、人・物の往来が活発になる可能性はありますが、それは地域の交流とは必ずしも関係ありません。 - 利権絡みの発注が解消されて、1kmあたりの建設コストが下がる可能性がある。 → 専門外なのでまったく想像がつきません。なお海外と日本を比較した場合、日本では山岳部でも橋やトンネルでまっすぐ作るためコストが高くなっている可能性があります。山岳部では80km/hや60km/hに制限してコストを下げるという方法も考えられます。 2010年 01月 30日
前回は経済学的な観点から、高速道路を無料化すると利用動向が変化し、公共交通は崩壊、道路のコストは増加、環境も悪化という悪いシナリオが想定されることを書きました。
今回は視点を変えて、問題となる高速道路無料化を含む政策がどのようなものか、民主党の出している高速道路政策について考えてみたいと思います。 民主党の高速道路無料化政策の重点を簡単にまとめると以下のようになると思います。 1. 高速道路会社6社が管理する高速道路は原則として無料 2. 首都高速・阪神高速など渋滞が想定される路線・区間については社会実験を実施して影響を確認しつつ実施 3. 無料化後の高速道路は道路法上の「一般国道」の「自動車専用道路」とする(毎年約1兆円の維持管理費を負担) 4. 今後の高速道路整備は国の一般財源により行う 5. 道路債務35兆円については国債と同様の60年償還とする(利子を含め毎年1.26兆円を60年間負担) これをさらに噛み砕くと、 ●基本的には全ての高速道路を無料にするが、社会実験の結果によって有料のままにするところがある。 ●高速道路の建設、維持管理、そしてこれまでの債務の負担、毎年3兆円以上は税収から負担する。 ということです。 ところで、現状この政策では少なくとも2点重要なことが明示されていません。1つは社会実験の結果有料のままにする基準がどこにあるかということ、もう1つは財源です。 社会実験の結果有料のままにする基準がどこにあるか、どういう方向にするかについては、高速道路政策大綱の中に、論点として「競合交通機関への影響及び交通弱者に対する配慮」というのがありますので、渋滞だけでなく公共交通絵の影響も加味するようです。この点は、社会実験が終わるまでには、よく議論して明確にしてほしいものです。 次に財源ですが、仮に全ての高速道路が無料化されると、債務と維持管理費用と新設の費用全てを満たす財源が必要になります。 この財源について、民主党の赤松広隆氏はカーゴニュース2009年3月10日号で、無駄を省けば捻出できるということを回答しています。 しかし、各方面で無駄を省けばという声が聞かれますから、たとえ3兆円以上無駄を省くことができたとしても、それが全て高速道路の財源に充てられることはなさそうです。 また事業仕分けによる予算の削減の状況を見ても、3兆円以上無駄を省くことも難しそうです。 一方、菅直人氏は2003年の高速道路無料化を打ち出した当時、私案として財源を自動車1台あたり5万円課税する案を出していました。 ちなみに毎年3兆円以上というのは、国民1人当たり約23,000円、登録されている自動車1台当たり約43,000円です。 財源については、本来始める前に明確にしておいてほしいものです。 明確になっていない重要な2点ですが、上記の内容から想像するに、渋滞するところは収益のよいところですから、収益のよいところは有料のままになり、逆に競合交通機関のある交通需要の少ないところも有料のままになるのではないでしょうか。そして財源を確保するために何らかの増税が行われるのではないでしょうか。 民主党の高速道路政策はそういうものになるのではないかと考えています。 最後に、最近のものと過去出された法案がWebで公開されていますので、リンクを掲載しておきます。 民主党『次の内閣』閣議(中間報告) 民主党高速道路政策大綱~高速道路の無料化~ 高速道路事業改革基本法案の概要 高速道路事業改革基本法案要綱 高速道路事業改革基本法案 2010年 01月 22日
前回、メリットとデメリットを上げる中で、利用動向の変化による影響というグループを作りました。
利用動向の変化は起きるのでしょうか。実際のところは実験と検証が必要ではありますが、これまでの学術的な研究や類似の現象を考えると、起きると考えるのが自然でしょう。そしてその変化が高速道路や一般道路、公共交通に様々な影響を与えます。今回はこれらの現象とシナリオについて考えてみたいと思います。 ■利用動向は料金で変化する 一般論ですが、同じ商品がいくつか並んでいる場合、普通は一番安いものを選ぶと思います。これを移動や物流で考えるならば、交通手段を選択する最も大きな要素はこれも一般的に移動時間ですから、同じ時間で移動できるならば、一番安い交通手段を選ぶことになります。 高速道路と同じ時間で移動できる交通手段というと、鉄道、バス+鉄道、高速バスあたりがこれにあたると思います。ここでの鉄道はそれなりに高速運転できる鉄道です。 高速道路が有料である現在は、高速道路を利用すると自動車に乗る人数によって1人あたりの料金が鉄道やバスの運賃よりも高いので、特に少人数での移動は公共交通が選択されます。 厳密には運賃が需要に応じて決定されている前提ではありますが、こうして鉄道もほどよく人が乗って、高速道路も程よく自動車が走っている状態が形成されます。 このように競争原理が働いて、交通手段という資源が効率的に分配されている状態を、経済学ではパレート効率的とかパレート最適と言うそうです。 パレート最適の状態では、需要者すべてが便益を受けることができて、かつ供給者の利益も最大になると言われており、最善の状態と言えます。 では、高速道路が無料になるとどうなるかというと、高速道路と公共交通を比較したとき、移動する人数などにかかわらず高速道路のほうが経済的ですので、高速道路を選ぶ人が多くなります。 そうすると、バスや鉄道はがらがらで、あとで述べますが高速道路は渋滞している状態になります。 こうして鉄道の側の資源は残っているにもかかわらず、移動したい人が所定の時間で所定の場所に移動できない状態は、パレート効率的ではない、パレート最適ではない状態になります。 パレート最適でない状態では、便益を受けられない人が発生する上に、供給者も十分な利益を得られないことになります。 高速道路が有料である現状と、高速道路が無料になった状態を考えてみましたが、経済学的な考えでも、利用動向は運賃や料金によって変化するものであると考えられます。 ■公共交通と道路の場合に発生する問題 高速道路が無料になった場合に、公共交通利用者が高速道路にシフトすることを説明しましたが、その後どのような問題が発生するかを考えてみます。 公共交通利用者が高速道路にシフトした場合問題になるのは、特に少人数での移動が自動車にシフトすることでしょう。 これは、結果としてシフトした人数に近い数の自動車が、高速道路に増えることを意味するからです。 3両編成の電車は、立っている人がまばらにいる状態で200人から300人くらい乗っています。1時間に2本走っている区間ならば1時間に500人くらい、3本走っている区間ならば700人以上移動している計算になります。 この電車に乗っている人の6割7割が高速道路にシフトした場合、高速道路では1時間あたり300台とか500台の自動車が増えることになります。 実際のところ高速道路の本線は、片側2車線あれば1時間あたり1000台以上走ることができるのですが、高速道路を下りた後の一般道路は500台も受け入れることができません。 結果として一般道路との合流から渋滞が発生します。 そしてさらに、高速道路の渋滞を避けるために並行するバイパスや国道にも自動車が流入して、こちらも渋滞が発生します。 一方公共交通の側では、一時的には値下げなどで乗客の減少を食い止めようと努力するでしょうが、当然採算が取れなくなりますから、徐々に減便や値上げをせざるを得なくなり、ますます競争力を失って、最悪廃止に至ると思われます。 なお、同様の仕組みで、これまでも国道やバイパスへのシフトも起きているのですが、国道やバイパスは片側1車線であることが多く、ある程度交通需要がある場所では需要が供給量を超えて渋滞を引き起こすなど、競争の対象にならなくなっています。 一方場所によっては、交通需要を国道やバイパスでまかなうことができ、国道などの整備によって公共交通から自動車にシフトして、すでに沢山のバス・鉄道路線が廃止されました。 ■想定されるシナリオ つまり、高速道路の無料化により、利用動向の変化は発生する可能性が非常に高く、メリットとデメリットからさらに踏み込んで次のような影響が発生すると考えられます。 ●一般道路利用者が高速道路にシフトして、自動車1台あたりのCO2排出量は減少するが、公共交通利用者が高速道路にシフトして、CO2排出源が増加し、運輸部門全体のCO2排出量が増加する。 ●公共交通と高速道路の間に不公平な競争が発生し、一時的には公共交通の値下げが行われる可能性もあるが、長期的には公共交通の採算が悪化し競争から撤退、つまり廃止される。 ●公共交通利用者が高速道路にシフトして高速道路が渋滞し、さらに高速道路が渋滞すると高速道路から一般道路にシフトして一般道路も渋滞する。結果として道路の拡張や建設が必要になり、高速道路も一般道路も維持や補修の費用が増加し、道路全体にかかるコストが大きく増加する。 悪い話ばかり並べましたが、高速道路についてはすでに政府が介入していて高速道路が有利になっているところに、さらに政府が高速道路が有利な方向に介入するのですから、当然の結果といえるでしょう。 休日に高速道路が1000円になったとき、すでに大渋滞が発生し、鉄道などの乗車率が減少しました。 1000円でこの状態ですから、無料となると近距離でも同様の現象が発生することが予測されますし、これらのシナリオが現実のものになる可能性は十分あり得るのです。 最後に、前回上げた利用動向の変化による影響を掲載しておきます。 <メリット> - 一般道路利用者が高速道路にシフトし、自動車1台あたりのCO2排出量が減少する。(渋滞しない場合に限る) - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、公共交通が値下げされる可能性がある。 <デメリット> - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、CO2の排出源が増加する。 - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、公共交通が廃止または減便される可能性がある。 - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、高速道路が渋滞する。 - 高速道路が渋滞すると高速道路から一般道路にシフトし、一般道路も渋滞する - 公共交通利用者が高速道路と一般道路にシフトし、道路の維持や補修の費用が増加する。 2010年 01月 20日
ここ数日Twitterにつぶやきつつ、高速道路無料化のメリットとデメリットを考えていたのですが、これをもとに高速道路無料化の是非について整理し始めました。
まず今回は考えたメリットとデメリットを整理したいと思います。 高速道路無料化のメリットとデメリットを整理しようと思うと、1つの内容について逆のことを言っているものがあります。例えば「並行するバイパスや国道などの渋滞が緩和する」と「高速道路だけでなく一般道路も渋滞する」です。 これは視点が異なるために発生しています。現状走っている自動車についてだけ考えるならば、並行するバイパスや国道の渋滞は緩和するのですが、移動手段全体で考えると、公共交通機関を利用していた人が自動車にシフトして高速道路だけでなく一般道路も渋滞すると考えられます。 現象を正しく捉えるためには、適切な視点から見るようにしなくてはなりません。 交通手段の利用動向については、交通手段全体で考えるのが適切であると考えます。 また、メリットとデメリットにはある程度の対応関係があるはずですが、ここで上げたメリットとデメリットには対応関係がないものがあります。 これはリストに漏れがあることを示していますので、漏れを埋めておかなくてはなりません。 これらのことを考慮して、メリットとデメリットを整理すると以下のようになりました。 ●直接的な影響 <メリット> - 通行料金収受の仕組みが不要になり高速道路の運用コストが削減される。 - 公共交通よりも安く、場所によっては速く移動できる。 - トラック輸送による物流コストのうち高速道路料金が削減される。 <デメリット> - 道路の建設や維持に税金を使うため、税金が上がる可能性がある。(特に自動車関連の税金) ●利用動向の変化による影響 <メリット> - 一般道路利用者が高速道路にシフトし、自動車1台あたりのCO2排出量が減少する。(渋滞しない場合に限る) - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、公共交通が値下げされる可能性がある。 <デメリット> - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、CO2の排出源が増加する。 - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、公共交通が廃止または減便される可能性がある。 - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、高速道路が渋滞する。 - 高速道路が渋滞すると高速道路から一般道路にシフトし、一般道路も渋滞する - 公共交通利用者が高速道路と一般道路にシフトし、道路の維持や補修の費用が増加する。 ●その他 <メリット> - 料金収受の機能がいらないのでインターを増やしやすい。 - 地域の交流が活性化する。(山や川で分断されていた地域の自動車利用者のみ) - 利権絡みの発注が解消されて、1kmあたりの建設コストが下がる可能性がある。 <デメリット> - 通行料の収受に関する雇用が無くなる。 必ずしもTwitterにつぶやいたものを全部上げているわけではありませんし、あらゆる面を網羅しているわけではありませんが、とりあえずこのくらいで考えを進めてみたいと思います。 最後に、Twitterにつぶやいた高速道路無料化のメリットとデメリットの概要を列挙しておきます。 ○Twitterにつぶやいたメリットの概要 - 通行料金収受の仕組みが不要になり運用コストが削減される。 - 物流コストのうち高速道路料金が削減される。 - 並行するバイパスや国道などの渋滞が緩和する可能性がある。 - 料金収受の機能がいらないのでインターを増やしやすい。 - 地域の交流が活性化する。 - 利権絡みの発注が解消されて建設コストが下がる可能性がある。 - バイパスなどを重複して作ることが防げる。 - 公共交通機関が企業努力して値下げされる可能性がある。 - 一般道路の交通量が減って道路の補修などのコストが削減される。 ○Twitterにつぶやいたデメリットの概要 - 道路の建設や維持に税金を使わなくてはならなくなる。 - 高速道路が渋滞する。 - 公共交通利用者がマイカーにシフトして、公共交通機関の廃止や減便を招く可能性がある。 - 公共交通利用者がマイカーにシフトして、CO2排出量が増える可能性がある。 - 様々な輸送が自動車にシフトして、高速道路だけでなく一般道路も渋滞する。 - 通行料の収受に関する雇用が無くなる。 2010年 01月 13日
先日、藤枝市にある日帰り温泉施設「瀬戸谷温泉ゆらく」に立ち寄ったのですが、バス停もきれいになったし、藤枝駅からの路線ができてとても便利になっていました。
バス停については、以前屋根はなかったと思うのですが、屋根もベンチもあるバス停になっていました。そして、ゆらくの建物にちょっと近づいたような気がします。バス路線は、以前は藤枝駅からゆらくに行く場合、 しずてつジャストライン:瀬戸ノ谷線 藤枝駅前→瀬戸谷小学校前 (2009/3/31廃止) 藤枝市営バス:大久保上滝沢線 瀬戸谷小学校前→瀬戸谷温泉ゆらく前 という経路で、乗換えがあって不便な上、運賃もしずてつジャストラインが確か600円くらい、市営バスが200円と、ちょっと割高な感じでした。 これが藤枝駅から直通のバス「藤枝市営バス:藤枝駅ゆらく線」が運転されるようになり、運賃も400円と約半額になりました。 運転本数は1時間半~2時間に1本程度なので、温泉にのんびり入るにはちょうどいい本数だと思います。(平成21年度現在) 温泉に自動車で来てしまうと、風呂上がりの一杯ができないので、バスが便利になるのは大歓迎です! 2010年 01月 12日
新東名高速道路の当面使用しない車線などを活用して物流新幹線を作るハイウェイトレイン構想というのがあります。この構想が実現すれば、高速道路の交通量を削減しつつ、東名阪の輸送力を増強しますし、CO2排出量の削減や、トラック運転手の労働環境改善などにも効果があり、すばらしいものだと思います。ただし、この構想の実現には、試算によると2兆円の建設もしくは構造物の補強などの費用がかかるようです。このコストを大きく削減し、かつこれに近い効果を出すために、2005年の愛・地球博でトヨタが出展したIMTSの技術を使ってみてはどうかという提案です。
この考えは、ハイウェイトレイン構想を基本としつつも、鉄軌道による鉄道ではなく、ゴムタイヤによる軌道にするという考えですが、軌道にそのままトラックを走らせたのでは輸送力の向上には結びつきません。そこでIMTSです。IMTSでは、車両を隊列走行させることができますので、例えば45ftコンテナ対応の専用自走式トレーラーを開発し、20台30台と隊列走行されば、鉄道に近い輸送力を得ることができます。 鉄道のほうがエネルギー効率が高くCO2の排出量も少ないほか、速度も輸送能力も高くなるかもしれません。しかし鉄軌道の敷設や電気設備の設置、鉄道の規格に合わせた構造物の改築や補強など、鉄道にするには多くのコストがかかります。IMTSであればこれらのコストを削減できますし、またハイウェイトレインの終端から一般道に入り、港湾や空港に繋げることも可能です。(一般道の改修も必要ではありますが) IMTSで物流新幹線を作った場合どのくらいのコストで設備が完成するのか、私の力では具体的な数字を示すことはできないのですが、おそらく鉄道よりも何割かコストを抑えることができると思います。一方、速度や輸送能力は技術の進歩とともに鉄道と遜色ないものになるでしょう。CO2排出量は、燃料電池車を使えば一般的にCO2排出量がガソリン車の1/4なので、トラックの1/4として鉄道の2倍未満に抑えられます。これらを総合的に考えれば、IMTSの技術を導入する合理性があります。 ハイウェイトレイン構想はすばらしい構想だと思います。だからこそ、初期コスト云々で夢で終わってしまうことなく、いろいろな方法を検討して実現してほしいと思っています。ぜひ専門家の方に検討していただきたいと思います。 2007年 10月 25日
明日10/26から(一般公開は10/27から)東京モーターショーが開催されます。
モーターショーではもちろんバスも出展されます。 ・日野はプレミアム大型観光バスなどを参考出品 ・三菱ふそう エアロクィーン…ホスピタリティを強化 など ですが、今日はエコの推進に向けた自動車メーカーの取り組みで、マツダの取り組みがいいなと思ったので紹介します。 マツダ…シリーズハイブリッドでもZoom-Zoom♪ シリーズハイブリッドは、エンジンは発電だけを行い、発電された電気とバッテリーの電気を使ってモーターだけで走行する方式のハイブリッドです。 この方式ではエネルギー効率を最大にするためにエンジンを一定の速度で回転させることが多いのですが、この記事のハイブリッド車はアクセルの踏み込みによってエンジンの回転が変化するそうです。 エコを進めると生活が辛くなったりつまらなくなったりするようでは、エコが進みにくいのは事実だと思います。そういった意味で、エコと運転の楽しさを両立するマツダのコンセプトはすばらしいと思いました。
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