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2010年 01月 22日
前回、メリットとデメリットを上げる中で、利用動向の変化による影響というグループを作りました。
利用動向の変化は起きるのでしょうか。実際のところは実験と検証が必要ではありますが、これまでの学術的な研究や類似の現象を考えると、起きると考えるのが自然でしょう。そしてその変化が高速道路や一般道路、公共交通に様々な影響を与えます。今回はこれらの現象とシナリオについて考えてみたいと思います。 ■利用動向は料金で変化する 一般論ですが、同じ商品がいくつか並んでいる場合、普通は一番安いものを選ぶと思います。これを移動や物流で考えるならば、交通手段を選択する最も大きな要素はこれも一般的に移動時間ですから、同じ時間で移動できるならば、一番安い交通手段を選ぶことになります。 高速道路と同じ時間で移動できる交通手段というと、鉄道、バス+鉄道、高速バスあたりがこれにあたると思います。ここでの鉄道はそれなりに高速運転できる鉄道です。 高速道路が有料である現在は、高速道路を利用すると自動車に乗る人数によって1人あたりの料金が鉄道やバスの運賃よりも高いので、特に少人数での移動は公共交通が選択されます。 厳密には運賃が需要に応じて決定されている前提ではありますが、こうして鉄道もほどよく人が乗って、高速道路も程よく自動車が走っている状態が形成されます。 このように競争原理が働いて、交通手段という資源が効率的に分配されている状態を、経済学ではパレート効率的とかパレート最適と言うそうです。 パレート最適の状態では、需要者すべてが便益を受けることができて、かつ供給者の利益も最大になると言われており、最善の状態と言えます。 では、高速道路が無料になるとどうなるかというと、高速道路と公共交通を比較したとき、移動する人数などにかかわらず高速道路のほうが経済的ですので、高速道路を選ぶ人が多くなります。 そうすると、バスや鉄道はがらがらで、あとで述べますが高速道路は渋滞している状態になります。 こうして鉄道の側の資源は残っているにもかかわらず、移動したい人が所定の時間で所定の場所に移動できない状態は、パレート効率的ではない、パレート最適ではない状態になります。 パレート最適でない状態では、便益を受けられない人が発生する上に、供給者も十分な利益を得られないことになります。 高速道路が有料である現状と、高速道路が無料になった状態を考えてみましたが、経済学的な考えでも、利用動向は運賃や料金によって変化するものであると考えられます。 ■公共交通と道路の場合に発生する問題 高速道路が無料になった場合に、公共交通利用者が高速道路にシフトすることを説明しましたが、その後どのような問題が発生するかを考えてみます。 公共交通利用者が高速道路にシフトした場合問題になるのは、特に少人数での移動が自動車にシフトすることでしょう。 これは、結果としてシフトした人数に近い数の自動車が、高速道路に増えることを意味するからです。 3両編成の電車は、立っている人がまばらにいる状態で200人から300人くらい乗っています。1時間に2本走っている区間ならば1時間に500人くらい、3本走っている区間ならば700人以上移動している計算になります。 この電車に乗っている人の6割7割が高速道路にシフトした場合、高速道路では1時間あたり300台とか500台の自動車が増えることになります。 実際のところ高速道路の本線は、片側2車線あれば1時間あたり1000台以上走ることができるのですが、高速道路を下りた後の一般道路は500台も受け入れることができません。 結果として一般道路との合流から渋滞が発生します。 そしてさらに、高速道路の渋滞を避けるために並行するバイパスや国道にも自動車が流入して、こちらも渋滞が発生します。 一方公共交通の側では、一時的には値下げなどで乗客の減少を食い止めようと努力するでしょうが、当然採算が取れなくなりますから、徐々に減便や値上げをせざるを得なくなり、ますます競争力を失って、最悪廃止に至ると思われます。 なお、同様の仕組みで、これまでも国道やバイパスへのシフトも起きているのですが、国道やバイパスは片側1車線であることが多く、ある程度交通需要がある場所では需要が供給量を超えて渋滞を引き起こすなど、競争の対象にならなくなっています。 一方場所によっては、交通需要を国道やバイパスでまかなうことができ、国道などの整備によって公共交通から自動車にシフトして、すでに沢山のバス・鉄道路線が廃止されました。 ■想定されるシナリオ つまり、高速道路の無料化により、利用動向の変化は発生する可能性が非常に高く、メリットとデメリットからさらに踏み込んで次のような影響が発生すると考えられます。 ●一般道路利用者が高速道路にシフトして、自動車1台あたりのCO2排出量は減少するが、公共交通利用者が高速道路にシフトして、CO2排出源が増加し、運輸部門全体のCO2排出量が増加する。 ●公共交通と高速道路の間に不公平な競争が発生し、一時的には公共交通の値下げが行われる可能性もあるが、長期的には公共交通の採算が悪化し競争から撤退、つまり廃止される。 ●公共交通利用者が高速道路にシフトして高速道路が渋滞し、さらに高速道路が渋滞すると高速道路から一般道路にシフトして一般道路も渋滞する。結果として道路の拡張や建設が必要になり、高速道路も一般道路も維持や補修の費用が増加し、道路全体にかかるコストが大きく増加する。 悪い話ばかり並べましたが、高速道路についてはすでに政府が介入していて高速道路が有利になっているところに、さらに政府が高速道路が有利な方向に介入するのですから、当然の結果といえるでしょう。 休日に高速道路が1000円になったとき、すでに大渋滞が発生し、鉄道などの乗車率が減少しました。 1000円でこの状態ですから、無料となると近距離でも同様の現象が発生することが予測されますし、これらのシナリオが現実のものになる可能性は十分あり得るのです。 最後に、前回上げた利用動向の変化による影響を掲載しておきます。 <メリット> - 一般道路利用者が高速道路にシフトし、自動車1台あたりのCO2排出量が減少する。(渋滞しない場合に限る) - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、公共交通が値下げされる可能性がある。 <デメリット> - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、CO2の排出源が増加する。 - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、公共交通が廃止または減便される可能性がある。 - 公共交通利用者が高速道路にシフトし、高速道路が渋滞する。 - 高速道路が渋滞すると高速道路から一般道路にシフトし、一般道路も渋滞する - 公共交通利用者が高速道路と一般道路にシフトし、道路の維持や補修の費用が増加する。
by bybus
| 2010-01-22 23:11
| 交通問題・交通対策
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